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デザートワインとは甘いワインのことです。
明確な定義はなく、甘いワインはすべてデザートワインということができます。
つまり、優しい甘さのものから、思わず目を見開いてしまうような極甘口までさまざまなタイプが存在します。そしてそれは、ブドウが持っているポテンシャルの甘みのみを使用しているものから、特殊な手法を用いてブドウの凝縮度を高めてつくるもの、高アルコールを入れる酒精強化と呼ばれるものまで様々です。
今回はどうやって甘いワインを造るのかを詳しくみていきましょう。
少し粘度のあるとろっとした黄金色の液体、グラスに鼻を近づけるだけでわかる官能的な香り、口に含んだ瞬間に目のさめるような濃厚な味わい、一口飲んだら病みつきになること間違いなしです。
デザートワインをつくるには大きく分けて、4種類の方法があります。
広義の意味では、酒精強化という醸造段階の方法でつくられる甘口ワインもありますが、まずはブドウ果汁の糖度を上げる4種類を順番に説明していきますね!
貴腐菌というカビ菌がブドウの果皮に付着することによって造ることができるワインです。
貴腐とは読んで字の如く「高貴なる腐敗」を意味し、カビまみれのブドウからは想像し難い極上のワインとなり、世界最高の甘口ワインともいわれています。
原料となる貴腐ブドウは、想像する一般的な白ワイン(辛口)と元は同じブドウです。
そのブドウがボトリティス・シネリアと呼ばれる菌に感染し貴腐ブドウを誕生させます。
このボトリティス・シネリア菌とはブドウの天敵、灰色カビ病の原因となる菌と同じものですが、ある特定の気候条件が揃うと貴腐ワインの原料である貴腐ブドウとなります。
大切なのは4点。
・成熟期にブドウが完熟すること
・夜から朝にかけて湿度が高くなること
・日中は晴れること
・上記の条件が1ヶ月以上続くこと
まずブドウが完熟しているというのがとっても大切です。
その完熟したブドウ(通常想像する辛口ワイン用のブドウはここで収穫します)を収穫することなく樹上に実らせておきます。
その樹上に実ったままのブドウが、神様のいたずらといろいろな条件でボトリティス・シネリア菌に感染します。
菌に感染したブドウは、午前中に湿度が高い状態が続くことで腐敗が進みます。この菌はミクロサイズの菌糸でブドウのワックス層を壊し穴をあけてくれます。
その後、天候が回復し晴れることで腐敗がストップし、菌が開けた穴からブドウの水分が蒸発します。
この状態が1ヶ月以上続くことで果実やブドウの樹が腐ることなく、ブドウのエキスのみ凝縮し、とても糖分の高い貴腐ブドウとなるのです。
糖分が高まったブドウの果汁は、発酵途中に酵母が活動できなくなり、極甘口のワインが誕生します。
貴腐菌によって得られる効果はブドウの凝縮だけではありません。
貴腐菌のついたブドウで造られるワインはハチミツやマーマレード、ドライレーズンのような独特の風味が生まれるのです。
この貴腐菌のついたブドウで造られるワインのボトルには「botrytised」や「noble rot」(貴腐)と表示されていることが多いです。
世界三大貴腐ワインとして有名なのはフランスのソーテルヌ、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイです。
その他ニュージーランドやオーストラリア、南アフリカでも造られていますし、種類は少ないですがイタリアでもたまに見かけます。日本でも稀に生産が可能です。
極上の貴腐ワインは濃密で濃厚で味に奥行きがあり、とても官能的でうっとりする味わいです。
貴腐ワインはその製法上、生産本数がとても少なかったり、ブドウの管理に手間がかかったりで高価なものが多いです。
そもそも貴腐菌が付着せず生産できなかったりと、とても貴重なワインで「ワインの帝王」と呼ばれることもあります。
世界三大貴腐ワインのうちのひとつ、ソーテルヌの貴腐ワインです。
ドライアプリコットやパイナップルの濃厚なフルーツ感はもちろん、優しいはちみつのニュアンスに余韻にクリームの柔らかさも感じられる、ソーテルヌの入口にぴったりなお手頃価格の一本です。
ポールクルーバー ノーブルレイトハーベスト リースリング 2021
こちらは南アフリカの貴腐ワイン。
リースリングという品種が使われています。
先のソーテルヌと同じようにドライアプリコットなどのフルーツに加え、こちらのほうがはちみつの甘さをしっかり感じられるのと、リースリングの特徴であるキリッとした酸を持っている貴腐ワインです。
トロッケンベーレンアウスレーゼ 世界三大貴腐ワイン ドイツとオーストリアのデザートワイン
ニュージーランドのデザート(極甘口)ワイン 貴腐ワインとあうおつまみ
トカイワインってなに?世界三大貴腐ワインの一つを深掘りしておすすめ
収穫時期を遅らせたブドウで造るワインです。
ブドウは完熟すると水分が抜け始めて干し葡萄状態になり、糖度が高まります。
先に書いた貴腐ワインほどの糖度は得られませんが、収穫タイミングを遅くするだけでも十分糖度の高いブドウを収穫することが可能です。
これには秋の収穫シーズンに乾燥して温暖な環境が大切になっていきます。湿度が高いとブドウが灰色かび病にかかってしまいます。
この製法を「passerillage」(パスリヤージュ)といい、この製法でつくるワインのことを「late harvest」(レイトハーベスト:英)や、vendange Tardive(ヴァンダンジュ タルディヴ:仏)と呼びます。
ニュージーランドにて日本人醸造家が手掛けるレイトハーベストです。
まさに大人のはちみつレモン、はちみつにレモンピールを漬け込んだようなニュアンスが詰まっています。
貴腐ワインほどの濃厚さは求めていないけれど甘いものが飲みたいときにぴったりです。
スペインで造られた赤のレイトハーベストです。
カシスやアメリカンチェリー、ドライプルーンやドライレーズンような果実味にカカオ豆やコーヒーのニュアンスを感じます。
甘さと同時に赤ワインの特徴であるタンニン分も感じられる、チョコレートのお供にしたい1本です。
収穫したブドウを風通しの良いところで乾燥させて、ブドウの凝縮度を高めて造るデザートワインです。
方法こそ違えど、先に紹介した貴腐ワインや遅摘みワイン同様、ブドウの水分が抜けることで糖分の高まったブドウを使用することで甘いワインを造ることができます。
うまく乾燥させるには、当たり前ですが乾燥しているのはもちろん、温暖な環境が必要な他、腐った粒から腐敗病が広がらないように、粒を一粒ずつしっかりと選果する必要があります。
この方法が有名なのはイタリアです。北から南まで、イタリア全土でこの手法を用いて甘口ワインを造っていて「passito」(パッシート)と呼ばれています。
そのイタリアの中でも、ヴェネト州にはレチョート・デッラ・ヴァルポリチェッラとレチョート・ディ・ソアーヴェと名のつく陰干しワインや、聖なるワインと呼ばれるトスカーナのヴィンサントが特に有名です。
ペッレグリーノ ネス パッシート ディ パンテッレリア ナトゥラーレ
奇跡という意味の名前を持つイタリアのパッシートです。
オレンジピールのはちみつ漬けにドライいちじく、ハーブのシロップ漬けを思わせる香りが広がる美しい琥珀色のデザートワインです。
日本ではまだまだ知名度の低いパンテレッリアという島でつくられています。
マスカットといえば白ぶどうを思い浮かべますが、これは黒ブドウ品種のマスカット、モスカートローザからつくられます。
ラズベリーやストロベリーのベリー感に加えて、シナモンやナツメグのようなスパイス感、そしてその名前の通りバラの香りも感じられます。
イタリアワインは本当に幅が広い。
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健康なブドウを収穫時期に収穫せず、冬まで樹に実らせたままにします。
気温が0℃を下回るとブドウが凍ります。ブドウは凍っていますが、凍っているのはブドウ内の水分のみで糖分などのエキスは凍っていません。
そのためこのブドウを絞るととても糖度の高い果汁部分だけを得ることができます。
学生時代、凍らせたスポーツドリンクを飲もうとしても、最初はものすごく甘い液体だった経験はありませんか?それと同じようなことをブドウで行っているのです。
凍らせたブドウ一房から得られる果汁はわずかティースプーン一杯分とごく少量です。
また、収穫時期を遅らせることにより病害や動物被害などのリスクや、思うように気温が下がらないリスクが生じるためとても高価なことが多いです。
冬の気温が低いカナダとドイツで多く造られ、「Eiswein」(アイスヴァイン)や「Icewine」(アイスワイン)と表記されます。
また、これらの国にはアイスワインを名乗るために、ドイツではマイナス7℃以下、カナダではマイナス8℃以下で収穫しなければならないなどの厳しい規定があります。
最近は地球温暖化の影響でどの国でも造ることが難しくなってきています。
アイスワインは貴腐ワインや陰干しワインとくらべて、純粋なブドウの味わいを楽しめたり、フルーティーなワインが多いのが特徴です。
アイスワインとは名乗れませんが、収穫したブドウを人工的に凍らせて、同様の効果を生み出し造られるワインもあります。「cryo extraction」(クリオ・エクストラクション)と呼ばれます。
下北沢ワインショップのアイスワインのラインナップで一番人気があるのがこちらです。
フリードリッヒ・ベッカーという、ドイツのピノ・ノワールの造り手といえばで必ず名前が挙がる生産者が手掛けています。
黄桃やオレンジを感じるやさしい甘さが心地良い、透明感のある味わいです。
ゴラン ハイツ ワイナリー ヤルデン
クリオエクストラクションで造られるイスラエルのデザートワインです。
ゲヴュルツトラミネールというフルーツの香りが強い品種が使われています。
ライチやアプリコットに桃、パイナップルやマンゴーといった、フルーツをぎゅーっと凝縮した甘さがお楽しみいただけます。
酒精強化ワイン(Fortified wine:フォーティファイド・ワイン)とは醸造中のワインに高アルコールを入れて造るワインのことです。
世界の三大酒精強化ワインというのも存在し、スペインのシェリー、ポルトガルのポートとマデイラがそれにあたります。そしてこれらは甘口だけではなく辛口のものも多く存在します。
そしてこの酒精強化ワインの甘口はいままでご紹介してきた4種類の甘口のなかでも、突出して甘いものが多いです。
ちなみに酒精を強化しているため、アルコール度数も高いです。
ワインはブドウ果汁を発酵させて造るお酒です。
そしてこの発酵は糖分と酵母が結びついて起こります。この酒精強化ワインの甘口は、アルコール発酵中のブドウ果汁(マスト)に酒精強化すると、酵母がアルコールに負けて発酵が止まります。
糖度が残った状態で発酵が止まるため甘口ワインが出来上がるのです。
有名なのは先にあげたシェリー、ポート、マデイラですが、もちろん他にも存在します。
フランスではヴァン・ドゥー・ナチュレルと呼ばれ、ローヌ地方のミュスカ・ド・ボーム・ド・ブニーズや南仏ルーション地方のリヴザルトがこれにあたります。
オーストラリアにもヴィクトリア州にラザグレンという酒精強化が有名な産地が存在します。
世界三大酒精強化のうちのひとつ、シェリー酒。その中でもっとも濃くて甘くて力強いあまさをもつのがペドロヒメネスを使用したものです。
ドライレーズンにドライいちじく、ベリージャム、チョコレートにキャラメル、濃厚でこってりした甘さが脳天を突き破ります。
日本は山梨で造られる、とても珍しい酒精強化ワインです。
先のシェリーとはまったくタイプが異なり、身体に染み渡るようなやさしい味わいです。
100年の歴史を誇るグレイスワインが手掛け、作家の山本周五郎が愛飲したとして有名な一本。
マスカットベーリーAと甲州という、日本でしか育てられていないぶどうから造られています。
デザートワインの販売していると「いつ飲むものなのですか?」とよく聞かれます。
正直にお答えいたしますと、いつでもいいです!になるのですが、下記の3つがおすすめです。
・食後酒として
・3時のおやつとして
・寝る前のリラックスタイムに
とっても甘いので、食後のデザート代わりにすると最高です。
特に干しぶどう感がしっかり出ているパッシートタイプがおすすめです。
また、糖分が多くすこしトロミがあるワインであるため、1度にたくさんではなく少量で満足感が得られます。
摂取アルコールが少なく満足度を得られるため、3時のおやつ時にのむのもいいでしょう。
純粋なブドウの風味が楽しめて、味わいが濃すぎないアイスワインがぴったりです。
寝る前にゆっくりと甘くて美味しいお酒を楽しむのも大人の特権です。
はちみつ感のある貴腐ワインはいかがでしょうか。
デザートワインは糖分がしっかりあるので、抜栓してから1ヶ月以上美味しい状態を保ってくれます。
毎日は飲まないよ、というかたにもオススメの飲み物です。
また、通常のワインほど温度管理に気を使わずとも大丈夫です。
(もちろん真夏に30度を超える部屋はオススメしませんが。。。)
デザートワインはかわいいボトルも多いのでインテリアの一つとして、部屋に飾るように保管するのも見た目から楽しくしてくれることでしょう。
まだまだ日本ではあまり馴染みのないデザートワインですが、知れば知るほど奥が深くて面白いワインです。
甘くて濃厚な味わいは、昔から人々を魅了し虜にしてきました。
下北沢ワインショップでは100種類以上のデザートワインを揃えて皆様をお迎えいたします。
甘くて官能的、めくるめくデザートワインの世界にぜひ足を踏み入れて見ませんか?
Tsubura Shingu 新宮瞳
Shimokitazawa Wine Shop 下北沢ワインショップ
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