デザートワインと聞くと貴腐ワインやアイスワインが思い浮かぶかたは多いでしょう。
実はもうひとつ「パッシート」と呼ばれるデザートワインがあることをご存知でしょうか?
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パッシートとは干しブドウから造られるイタリアのデザートワインです。
干しブドウを使用することで、アルコールやタンニンのしっかりした、甘くて骨格あるワインとなります。
パッシート(Passito)という名前はイタリア語で“枯らす”を意味するアパッシメント(Appassimento)に由来しています。
なお、パッシートは干しブドウで造られたワインのこと、アパッシメントはその製法を指しますが、現在ではパッシートも製法の意味合いで用いられることが多くなってきています。
完熟したブドウを収穫した後、3週間から長いときで6ヶ月ほど乾燥させます。
ブドウの水分は10%から60%、品種やワインのスタイルによって飛ばす水分の量を調整します。
今日では空調管理がしっかりある環境で乾燥させる生産者がほとんどですが、いまでも天日干しを選ぶ生産者もいます。
作物は成熟して糖度が高まるのに比例して酸度が落ちていきます。
しかし、収穫した時点で成熟のプロセスが止まるため、その時点から酸度が落ちることはありません。
干しブドウにすることで糖分はもちろん酸やその他の成分も凝縮するため、深みのあるワインを造ることが可能となります。
この干しブドウを使用したワインは古代ギリシャから始まりました。
ワインの保存期間を長くできるよう、アルコール度数が高く安定しているワインにするため、ブドウを干してワインを造ったとされています。
このパッシートワインは中世から14世紀ごろまで、イタリア全土で非常に人気がありました。
現在ではギリシャを含む他のどの国よりも多くのパッシートワインを造っています。
パッシートワインはイタリア全土で造られていますが、その中でも特に有名なものをご紹介いたします。
地中海に浮かぶシチリア島とアフリカ大陸の間に、パンテレリア島という火山島があります。
とても美しいこの島は、「地中海の黒真珠 (the Black Pearl of the Mediterranean)」とも呼ばれているそうです。
ここに有名なパッシートワイン、パッシートディパンテレリア(Passito di Pantelleria)があります。
古代のマスカット品種ジビッボ(マスカット オブ アレキサンドリア)からつくられるこのワインは、ドライアプリコットやはちみつの濃厚さ、さらにオレンジのような特徴を持っていることが多いです。
パンテレッリアについてはこちらからどうぞ!
地元の言葉で奇跡という意味の「ネス」の名を持つデザートワインです。
シトラスピールの砂糖漬けやドライアプリコットにドライいちじくの凝縮したアロマ、熟したももや蜂蜜の濃厚さにユーカリやセージのようなハーブのニュアンスを感じられるデザートワインです。
パッシートワインと同じようにブドウを陰干しして造る北イタリア、ヴェネト州で造られるワインに「レチョート デッラ ヴァルポリチェッラ」と「レチョート ディ ソアヴェ」があります。
レチョートとは耳たぶを意味します。
ブドウを耳たぶくらいの硬さになるまで干すことからつけられたとされています。
レチョート デッラ ヴァルポリチェッラとレチョート ディ ソアヴェについてはこちらからどうぞ。
ヴァルポリチェッラはアルプス山麓の丘にある千年以上の歴史を持つワイン産地です。
ガーネット色の美しい外観を持っています。クランベリーやダークチェリーにドライプルーンやレーズンの濃厚なフルーツ感、ダークチョコレートも口いっぱいに広がります。
同じヴェネト州のレチョートでも、こちらはソアヴェ地区で造られる白のデザートワインです。
青りんごや洋梨の蜜のニュアンス、マーマレードジャムにドライいちじくのニュアンスも感じます。
ペルラーラの名は、この造り手の家にある桃のような果実の木、ペルラからつけられたそうです。
主にトスカーナ州で造られるデザートワインで、同じく陰干ししたブドウから造られます。
しかしパッシートワインと比べるといろいろと決まり事が多くあります。
ヴィンサントについはこちらからどうぞ。
トレッビアーノとマルヴァジアから造られるヴィンサント、藁の上で5ヶ月陰干ししたブドウを使用しています。
ドライレーズンにキャラメルやトフィー、ブラウンシュガーなども感じられる深みあるデザートワインです。
アパッシメントを利用したデザートワインは主にイタリアワインに多いのですが、もちろん他の国でも造られています。
日本でも人気のルイボスティー。そのルイボス、実は南アフリカにしか生息していないことはご存知でしょうか。
このワインはルイボスの茶葉の上で干して造られるワインです。
桃のシロップ漬けやアプリコットに濃厚な蜂蜜感、余韻はルイボスの爽やかさが心地よい一本です。
アパッシメントを利用したデザートワインは日本でも。
栃木県は足利にあるココファームワイナリーがイタリア ヴィンサントスタイルの甘口をつくっています。
なんと9年もの熟成をさせてから瓶詰めされた1本です。ヴィンサントスタイルではありますが、品種は日本固有の甲州種100%、日本ならではの味わいです。
いかがでしたでしょうか。
まだまだ認知度の低いパッシートワインですが、味わいに幅がある面白いデザートワインです。
貴腐ワインやアイスワインとともにぜひ覚えておいてくださいね!
Tsubura Shingu 新宮瞳
Shimokitazawa Wine Shop 下北沢ワインショップ
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